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胃がんの症状・原因・治療方法

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胃がんは、悪性新生物による死亡原因のうち、日本では胃がんは男性では肺がんについで2番目、女性では第1位です。しかしわが国の胃がんの診断と治療のレベルは世界でもっとも発達しており、近年ではほぼ半数の患者は早期がんのうちに発見されます。必要以上に病気をおそれることなく、早期発見、早期治療を心掛けてください。

胃がん患者の男女比はほぼ2.5対1で男性に多くみとめられます。また手術時の年齢の平均は、男女ともに60歳前後で診断されることが多く、男性が女性にくらべて若干高齢です。

早期がんと進行がん

胃の壁はもっとも内側が粘膜層、もっとも外側が漿(しょう)膜で、その間に平滑筋(へいかつきん)という筋肉の層があり、断面で見るといくつかの層を重ねた構造になっています。
このうち筋肉の層まで達していない胃がんを「早期胃がん」、筋肉の層に達し、またはこれを越えて深くなった胃がんを「進行胃がん」と呼び、転移の有無とは無関係に定義されています。
したがって早期胃がんであっても転移をきたしていることもあり、逆に進行胃がんであっても、胃にとどまって転移をきたしていないこともあります。

症状

早期胃がんのほとんどは無症状で定期検診などをきっかけに発見されます。症状があり、それをきっかけになんらかの異常が発見された場合でも結局、がんとは無関係であったということはしばしば経験されます。
これに対して進行がんではがんが深くなることによる心窩(しんか)部(みずおち)の痛みや、がんによって食べ物の通過が障害されることによる胃のもたれ、吐き気、胸やけ、食欲不振などがみとめられます。

がんからの出血が多くなると貧血やまっ黒な便(タール便)がみとめられたり、栄養状態の低下による体重減少もみとめられます。がんが胃の壁を貫いてもっとも外側の漿膜に達すると、がん細胞がおなかの中〔腹腔(ふくくう)内〕に種をまいたようにこぼれだし、腹膜播種(はしゅ)という状態となって腹水がたまることもあります。

がんによる上腹部の痛みは近年の優れた抗潰瘍薬のおかげで一時的によくなることがほとんどですが、もちろん潰瘍の薬によってがんが治るわけはなく、症状が一時的に軽減しただけなのでけっして安心せず、気が進まなくても内視鏡検査などの精密検査を受けるようにしてください。

診断方法

胃がんの診断はバリウムを用いたX線検査と内視鏡検査でおこないます。X線検査は定期検診でおこなわれる方法で、バリウムを飲んだのちにからだの向きを変えていろいろな方向から撮影をおこないます。
さらに胃の中に空気を送り込んだり発泡剤を飲んで、胃の壁に薄くバリウムを貼りつけるようにして粘膜の状態を描出してこまかい病変や浅い病変まで観察します(二重造影法)。胃の内腔に突出する病変があればその部分でバリウムは抜けるように描出され、深く陥凹(かんおう)する病変であれば、くぼんだ部分にバリウムがたまる像がみとめられます。
また注意深く検査・観察をすると、早期がんであっても粘膜のひだが、がんを中心にして集中する像や、わずかな粘膜模様の乱れとして発見することもできます。

X線検査は胃の全体像をとらえることが可能であり、がんが胃の中のどこに位置し、どれくらいの大きさであるかを把握するのに有用です。しかし潰瘍を伴わず粘膜にとどまるような、きわめて早期のがんは周囲の正常胃粘膜との構造上の違いがあきらかでないことも多く、色調の変化としてのみ発見されることもあり、早期胃がんの診断・発見には内視鏡検査のほうが有効です。

X線検査、内視鏡検査はそれぞれに一長一短があります。定期検診でおこなわれるX線検査で異常がなかったとしても必ずしも安心はできません。またX線検査でも胃がんの診断は十分可能ですが、がんとしての最終診断は細胞を顕微鏡で調べる「病理組織学的診断」です。病理学的にがんと診断されてはじめて胃がんの診断が確定します。そのためには内視鏡検査をおこなって、「生検」といって内視鏡を通して耳かきほどのわずかな胃の粘膜を採取して、顕微鏡で検査することが必要です。以前とは異なり内視鏡検査に用いるファイバースコープは細く、柔軟になり検査に伴う苦痛はかなり軽減されました。内視鏡検査時には肩とくびの力を抜いてのどを締めつけず、ゆっくりと深呼吸をくり返すようにすると楽に検査を受けられます。

治療方法

悪性疾患であるがんと消化性潰瘍などの良性疾患の治療の根本的な相違は周囲のリンパ節をとるリンパ節郭清(かくせい)か否かです。がんであってもリンパ節転移の危険性がないと判断された場合は内視鏡技術の進歩により内視鏡を用いて胃の粘膜だけを大きく切りとることで治療が完了することもあり、内視鏡技術の進歩によって近年さかんにおこなわれるようになっています。

また一般的にがん治療の1つとして抗がん薬治療がありますが、現時点では抗がん薬治療だけで胃がんを完全に治癒させることは不可能です。抗がん薬はおもに手術後の再発予防のために用いたり、再発した場合に病気の進行を食い止めるために用いられたりしています。