慢性胃炎の大多数は基本的に無症状であることが特徴で、内視鏡検査などで発見されることがほとんどです。表層性胃炎では上腹部の不快感や鈍痛、胸やけなどを感じることもあります。
暴飲暴食、過度の飲酒やストレス。または、ヘリコバクター・ピロリが慢性胃炎の主因であることが明らかになりました。
従来から暴飲暴食、過度の飲酒やストレスを避け、規則正しい生活を心掛けることが推奨されています。さらに近年ヘリコバクター・ピロリが慢性胃炎の主因であることがあきらかになって以来、ヘリコバクター・ピロリの除菌治療がおこなわれています。
慢性萎縮性胃炎は高齢になるにつれてその発症頻度が増加するといわれ、また慢性萎縮性胃炎は胃がん発生のリスクの1つと疑われています。したがって、慢性胃炎はほとんど症状もなくうったえも少ない病気ですが、その診断と治療でもっとも注意しなければならないことは胃がんの発生を見落とさないことです。
慢性胃炎と診断された場合は年に1回程度の定期的な内視鏡検査をおこないます。その際に必要があれば早期の胃がんが発生していないかどうか微量の胃粘膜組織を採取して顕微鏡で調べる病理組織学的検査をおこないます。
]]>消化性潰瘍は好発年齢が胃がんにくらべて若年であり、胃では中ほどの屈曲している「胃角部」、十二指腸ではその始まりのふくらんだ部分である「球部」に好発し、しばしば1つではなく多発します。またあたたかい時期よりも冬季に発生し、季節的に発生頻度に差があることも特徴です。
消化性潰瘍の症状の代表的なものは心窩(しんか)部(みずおち)の痛みで、時には背中に抜けるほどの痛みとなります。
潰瘍が深くなると出血を伴うことが多く、一時期に大量に出血すると口から血を吐いたり(吐血)、便に出血したり(下血)しますが、比較的ゆっくりとじわじわ出血が続く場合には出血した赤血球中のヘモグロビンが酸化されて便がまっ黒になりタール便と呼ばれ、胃や十二指腸からの出血に特徴的です。
また近年、食べた肉由来の血液でなく便中の自分の微量な血液も検出できる便潜血検査法が確立され、定期検診での便検査が発見のきっかけとなることもあります。
胃潰瘍と十二指腸潰瘍の痛みの発生する時刻には違いがあり、胃潰瘍では胃の中に食べ物が入った状態で痛みの発生することが多く、食後早い時間に痛みが発生します。
これに対して十二指腸潰瘍では胃の中が空である空腹時や夜間に痛みが発生することが多く、食事によって痛みがやわらぐ特徴があります。
痛みが急激に強くなり立っていられず、少しでもおなかをさわると飛び上がるほどの強烈な痛みが起きた場合は、潰瘍が非常に深くなり胃や十二指腸の壁に孔(あな)があいて〔穿孔(せんこう)〕、胃や十二指腸の内容液が外へ漏れだし腹膜炎となった可能性が高いので、一刻も早く手術のできる病院に行ってください。
また胃の出口に近い場所や十二指腸の入り口の部分に潰瘍ができ、慢性的に潰瘍の再発をくり返していると、潰瘍の傷あとがしだいにかたくなり壁が厚くなって食べ物の通り道が細くなり〔狭窄(きょうさく)〕、食べ物の通過に支障をきたすことがあるので、手術をしなければならないこともあります。
消化性潰瘍の原因としては古くから様々な考え方があり、さらに近年はヘリコバクター・ピロリも原因の1つとして重要視されています。また急性胃粘膜病変と同様に非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)も消化性潰瘍の原因とされています。
胃はペプシンという消化酵素と塩酸を分泌しますが、これらの消化作用は非常に強力です。ペプシンと塩酸の強力な消化力で胃の壁自体も消化されそうに思われますが、実際にはそのようなことは起きません。
胃の粘液分泌や胃の粘膜の血流などが防御因子となり、この攻撃因子と防御因子のバランスがうまく保たれることによって、胃は自らの消化液で傷つくことを防いでいるのです。
しかし、攻撃因子が増強したり防御因子が減弱したりして、このバランスがくずれて攻撃因子が優勢になると、胃の粘膜が傷つき、さらにその傷が深くなり潰瘍に至ると考えられています。
これが古典的な消化性潰瘍発生のメカニズムと考えられていましたが、近年のヘリコバクター・ピロリの発見によって難治性潰瘍や再発性潰瘍に対する考えかたは一変しました。
ヘリコバクター・ピロリは胃酸が分泌される過酷な胃内の環境で生存・増殖が可能な細菌の一種であり、胃の粘膜に感染を起こすと炎症を引き起こし、さらに粘膜を傷害して、ついには潰瘍を形成するという考えかたがほぼ受け入れられるようになりました。
今日では再発をくり返す慢性消化性潰瘍の原因の多くは、ヘリコバクター・ピロリではないかと考えられています。
また直接的にではなくても間接的に消化性潰瘍の誘因となるものには、喫煙、飲酒、ストレス、過労などが考えられており、これらは潰瘍をわるくする方向にはたらきますので注意しなければなりません。
消化性潰瘍の検査として重要なのはバリウムによるX線検査と内視鏡検査です。潰瘍は消化管の傷ですからX線検査ではその傷口にバリウムがたまって診断することができます。
また潰瘍のあと〔潰瘍瘢痕(はんこん)〕などもX線検査で胃や十二指腸壁のわずかな変形として診断できます。
しかし診断の精度が高く、またがんとの鑑別に威力を発揮するのは内視鏡検査です。潰瘍の深さや出血の有無は直接肉眼で観察できる内視鏡検査が優れていますし、現在出血していることが疑われる場合には、まっさきに内視鏡検査をおこなわなければなりません(緊急内視鏡検査)。
実際に内視鏡検査をおこなうと、細い血管から出血していることが肉眼で確認され、出血部位を内視鏡用の特殊な小型金属クリップではさんで止血したり、止血のための薬剤を注入・散布したりして出血をとめることができ、たいへん有効です。
十数年前までは消化性潰瘍の治療の主役は手術治療でしたが、H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)の出現によって手術治療の必要な症例は激減しました。
近年さらに強力なプロトンポンプ阻害薬(PPI)が開発され、消化性潰瘍の治療はむかしの外科的な「手術治療」から内科的な「薬の治療」へと大きく変貌しました。
胃潰瘍そのものが胃がんに変化することはないと考えられていますが、早期胃がんのうちのあるものは良性潰瘍に似たかたちをとることがあり、注意が必要です。
また潰瘍の痕跡と思って内視鏡で組織を採取して顕微鏡で病理学的に検査したところ、がん細胞が認められたなどということも実際の臨床では経験されることであり、潰瘍であるといったん診断されてもけっして油断はできません。
したがって潰瘍や潰瘍の痕跡があると指摘された場合は、必ず一度は内視鏡検査を受けて胃がんを否定しておくことが望ましいと考えられます。また消化性潰瘍をくり返す難治性の場合、今後はヘリコバクター・ピロリの検査も治療法を決定するうえで重要な情報になるでしょう。
胃がん患者の男女比はほぼ2.5対1で男性に多くみとめられます。また手術時の年齢の平均は、男女ともに60歳前後で診断されることが多く、男性が女性にくらべて若干高齢です。
胃の壁はもっとも内側が粘膜層、もっとも外側が漿(しょう)膜で、その間に平滑筋(へいかつきん)という筋肉の層があり、断面で見るといくつかの層を重ねた構造になっています。
このうち筋肉の層まで達していない胃がんを「早期胃がん」、筋肉の層に達し、またはこれを越えて深くなった胃がんを「進行胃がん」と呼び、転移の有無とは無関係に定義されています。
したがって早期胃がんであっても転移をきたしていることもあり、逆に進行胃がんであっても、胃にとどまって転移をきたしていないこともあります。
早期胃がんのほとんどは無症状で定期検診などをきっかけに発見されます。症状があり、それをきっかけになんらかの異常が発見された場合でも結局、がんとは無関係であったということはしばしば経験されます。
これに対して進行がんではがんが深くなることによる心窩(しんか)部(みずおち)の痛みや、がんによって食べ物の通過が障害されることによる胃のもたれ、吐き気、胸やけ、食欲不振などがみとめられます。
がんからの出血が多くなると貧血やまっ黒な便(タール便)がみとめられたり、栄養状態の低下による体重減少もみとめられます。がんが胃の壁を貫いてもっとも外側の漿膜に達すると、がん細胞がおなかの中〔腹腔(ふくくう)内〕に種をまいたようにこぼれだし、腹膜播種(はしゅ)という状態となって腹水がたまることもあります。
がんによる上腹部の痛みは近年の優れた抗潰瘍薬のおかげで一時的によくなることがほとんどですが、もちろん潰瘍の薬によってがんが治るわけはなく、症状が一時的に軽減しただけなのでけっして安心せず、気が進まなくても内視鏡検査などの精密検査を受けるようにしてください。
胃がんの診断はバリウムを用いたX線検査と内視鏡検査でおこないます。X線検査は定期検診でおこなわれる方法で、バリウムを飲んだのちにからだの向きを変えていろいろな方向から撮影をおこないます。
さらに胃の中に空気を送り込んだり発泡剤を飲んで、胃の壁に薄くバリウムを貼りつけるようにして粘膜の状態を描出してこまかい病変や浅い病変まで観察します(二重造影法)。胃の内腔に突出する病変があればその部分でバリウムは抜けるように描出され、深く陥凹(かんおう)する病変であれば、くぼんだ部分にバリウムがたまる像がみとめられます。
また注意深く検査・観察をすると、早期がんであっても粘膜のひだが、がんを中心にして集中する像や、わずかな粘膜模様の乱れとして発見することもできます。
X線検査は胃の全体像をとらえることが可能であり、がんが胃の中のどこに位置し、どれくらいの大きさであるかを把握するのに有用です。しかし潰瘍を伴わず粘膜にとどまるような、きわめて早期のがんは周囲の正常胃粘膜との構造上の違いがあきらかでないことも多く、色調の変化としてのみ発見されることもあり、早期胃がんの診断・発見には内視鏡検査のほうが有効です。
X線検査、内視鏡検査はそれぞれに一長一短があります。定期検診でおこなわれるX線検査で異常がなかったとしても必ずしも安心はできません。またX線検査でも胃がんの診断は十分可能ですが、がんとしての最終診断は細胞を顕微鏡で調べる「病理組織学的診断」です。病理学的にがんと診断されてはじめて胃がんの診断が確定します。そのためには内視鏡検査をおこなって、「生検」といって内視鏡を通して耳かきほどのわずかな胃の粘膜を採取して、顕微鏡で検査することが必要です。以前とは異なり内視鏡検査に用いるファイバースコープは細く、柔軟になり検査に伴う苦痛はかなり軽減されました。内視鏡検査時には肩とくびの力を抜いてのどを締めつけず、ゆっくりと深呼吸をくり返すようにすると楽に検査を受けられます。
悪性疾患であるがんと消化性潰瘍などの良性疾患の治療の根本的な相違は周囲のリンパ節をとるリンパ節郭清(かくせい)か否かです。がんであってもリンパ節転移の危険性がないと判断された場合は内視鏡技術の進歩により内視鏡を用いて胃の粘膜だけを大きく切りとることで治療が完了することもあり、内視鏡技術の進歩によって近年さかんにおこなわれるようになっています。
また一般的にがん治療の1つとして抗がん薬治療がありますが、現時点では抗がん薬治療だけで胃がんを完全に治癒させることは不可能です。抗がん薬はおもに手術後の再発予防のために用いたり、再発した場合に病気の進行を食い止めるために用いられたりしています。
]]>胃下垂は、指摘されなければほとんど症状はありません。上腹部の不快感やもたれ、膨満(ぼうまん)感などのおなかの症状に加えて、めまい、倦怠(けんたい)感などの自律神経の症状をうったえることもあります。
胃下垂の原因はいろいろな要因で起こりますが、「胃を支える筋肉や脂肪の少ない痩せ型で身長が高い人」がなりやすいと言われ、このような方が暴飲暴食、過労、 不安などによるストレスによって、胃の消化が悪くなり胃に食物が溜まり過ぎてしまったために引き起こされることが多い。
その他の原因としては、腹部の手術や出産などを繰り返した場合にも起こることがあります。
胃下垂症には病的意義はなく基本的には治療は必要ありません。十分にカウンセリングをおこなうことがもっとも大切です。
規則正しい生活を行い、適度な運動をすることで健全な生活をおくることができます。また、腹筋を鍛え、適度な脂肪を付けることで胃が押し上げられ、正常になる場合もあります。
それでも何らかの症状がある場合は、消化管の運動を高めて胃内容物の停滞を防ぐ薬剤をのむこともあります。
]]>急性腸炎の原因は、感染性腸炎が多く、中でも一番多い原因は食中毒です。腐った食べものを食することによって起きます。他には海外旅行、特に東南アジアなどに行ったときに病気の原因となる細菌の入った生水を飲んだりすると起きることがあります。
また、ペットに付着した細菌が口に入って起きることもあります。原因となる細菌は、O-157などの病原性大腸菌やブドウ球菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオのほか、以前、からしれんこんによる食中毒で有名になったボツリヌス菌、コレラ菌、赤痢菌、パラチフス菌などです。
ウイルスは乳幼児の腸炎の原因となるロタウイルスなどです。
非感染性腸炎は薬剤、特に抗生物質の服用や貝類、キノコ類などの毒素が原因となります。
急性腸炎の症状は、主に下痢と腹痛です。下痢の状態によって腸のどの部分が悪いかを推測できることがあります。例えば、粥(かゆ)状から水様の消化不良の便に少量の粘液が混じっている場合は、小腸の病変を疑い、大量の粘液が便の表面に付着しているときは大腸の病変を疑います。
また時々、血が混じる場合があります。乳幼児で起きるロタウイルスによる下痢は、白痢ともいわれ、白色の便が大量に出ます。現在では少なくなりましたが、状況に応じて入院が必要となる赤痢では、血のまじった下痢便が、コレラでは、米のとぎ汁様の水様便が出ます。
急性腸炎の下痢の回数は1日2~3回から、ひどいばあには20回以上にもなり、便は特有の悪臭があります。
へそを中心に腹痛がある場合は小腸に病変が、大腸の走行に沿って腹痛がある場合は大腸に病変があることが疑われ、数分ごとに痛くなったり、痛みがやわらいだりをくり返したり鈍痛が続くことがあります。痛みがやわらいでいる時期にもそれまでに痛みがあった場所を押さえると痛みがあります。
その他、吐き気や嘔吐(おうと)の症状みられたり、発熱したりします。その結果、脱水症状となり口が乾いたり、皮膚がカサカサになったり、尿の量が減り、尿の色が濃くなったりします。乳幼児では元気がなくなってきます。
上述の急性腸炎の症状がみられる場合は、できるだけ早く医師の診断を受け、まず原因を調べ、最適な処置をとらなければなりません。特に乳幼児は突然に脱水状態に陥りやすいので、元気がなくなってきたらすぐに医師の診断、治療を受けてください。
医師は糞便(ふんべん)検査を中心として、ほかに採血などで原因を特定します。細菌が原因のときは培養に日数を要するため、そのほかの症状や問診(なにを食べたか、どこへ行ったか、特に海外渡航歴など)などで診断します。
急性腸炎の治療は、まず脱水症状の対策、食事療法、薬物治療がおこなわれ、腸の中の悪いものを排出するのが重要で、無理に下痢をとめることはしません。
脱水症状の対策として、塩分・糖分を適度に摂取できるスポーツ飲料を飲むとよいでしょう。ただし冷たいものは胃腸への刺激があるため、室温程度のものにします。その他には、湯冷ましやスープ、味噌汁の上澄み液を少量ずつ頻回に摂取するようにしてください。炭酸飲料などは、胃腸への刺激があるので控えて下さい。嘔吐、下痢がひどい場合は水分の補給が必要なため点滴が必要です。
もし、食べられるなら、お粥やうどんなど消化のよい、繊維質の少ないものを少量食べるのが望ましく、下痢・嘔吐が多いときは水分だけとるようにします。
長期間の絶食は、腸管への栄養が低下してしまいますので避けてください。
特に子供の場合には、脱水症状や栄養の低下を防ぐため食欲が出始めたら出来るだけ食事をして下さい。
牛乳は腸管の水分の分泌を促進し、便の量を増加させるため当分の間避けてください。そのほか腸管運動を亢進(こうしん)させるため避けたほうがよい食物は、繊維の多い野菜、果物、脂肪の多いもの、酸味の強いもの、辛いもの、コーヒーやアルコール類などです。
急性腸炎の薬物療法として、医師は収斂(しゅうれん)薬、乳酸菌製剤などを処方します。下痢を急にとめるような薬剤は、上述のように基本的に使用しません。
抗生物質の投与は細菌性腸炎のときにおこないますが、その菌にあった薬剤を医師が処方しますので、ご家庭にある抗生物質を自己判断で服用してはいけません。菌に感受性のない抗生物質を使いますと、薬剤の効果が低下するだけでなく、副作用が出て危険なことがあります。
慢性腸炎の症状は、比較的長期にわたって下痢や、便通異常が続きます。ただしこの症状を伴っても慢性腸炎ではなく過敏性腸症候群や吸収不良症候群のこともあります。
慢性腸炎の原因は、感染によるものには腸結核、カビの一種である放線菌による放線菌症、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛(べんもう)虫という寄生虫によるランブリアなどがあります。
感染症以外の原因には、腹部に放射線治療をおこなったときに起きることがある放射線照射性腸炎の慢性型、潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病などがあります。
慢性腸炎の治療は、原因によって治療法が異なるため医師による診断が必要です。感染症では抗生物質などの薬剤を使うことがあります。感染症以外のときは副腎皮質ステロイド薬を使うこともあります。食事療法も原因によって異なりますが、一般的には刺激物は避けてください。
]]>腸結核の原因のほとんどは、肺結核の患者が結核菌を含んだタンを飲み込むことから起こります。
腸結核の症状は、下痢、腹痛、発熱、だるいなどの症状があらわれます。
特に小腸の結核では栄養状態が急に悪化し体重が減少したり、顔色がわるくなります。炎症が進むと腸管が細くなることがあり、吐き気や嘔吐(おうと)を伴います。
中高年者ではこのような症状に気づかずに腸結核が自然治癒し、その後、腹部、多くは右下腹部にしこりが偶然見つかることがあります。
腸結核の治療は、抗結核薬を投与します。消化のよい食事にして、腸を安静に保つ必要があります。抗結核薬によく反応し、ほとんど内科的治療で治ります。ただし腸管が狭くなったときは、その部分を切除する手術が必要となることもあります。
]]>腸閉塞の原因は、いくつかの要因が考えられます。
腸の内容物の通過障害の場合は、この内容物を下に流そうとして腸が活発に動くために腹痛が起こります。また、この腹痛は腸の動きに応じて痛みに強弱があり、周期的に起こります。
腸が何かの影響で締めつけられて通過障害が起こった場合は、急激に腹痛が発生し、しかも絶えることなく続きます。さらに、腸への血管も同時に圧迫され、血液が腸へうまく流れなくなり腸が腐ることもあります。この場合は腸に孔があき、腸の内容物が腹部の中に広がり腹膜炎になります。
また、閉塞部より口側では、腸の内容物が貯まり腸管が拡張し、おなかがはってきます。このまま閉塞部が治らないと内容物が過剰になり、逆流を起こし腸液を嘔吐(おうと)するようになります。さらに閉塞部より肛門側に腸の内容物は流れなくなり、排ガス・排便が停止します。 腹痛、嘔吐、腹部膨満、排便・排ガス停止のこれらの4つの症状が主な症状となります。
腸閉塞の診断は、その症状や過去の病気、腹部単純X線写真から簡単に診断できます。腸閉塞が疑われても腹部単純X線で異常がない場合は、CT検査をおこなうこともあります。大腸に閉塞があると思われるときは、原因を確認するため注腸検査をします。
一般に症状が比較的軽い場合は、食事や水分の制限を行い、脱水や塩分やカリウム、カルシウムなど電解質異常を改善するために輸液を行います。
また嘔吐や誤嚥(ごえん)の予防、腸の内容物貯留によるさまざまな症状をひき起こさないように、鼻から胃や小腸にチューブを入れることもあります。必要に応じて鎮痛薬、抗生物質を投与します。
またS状結腸の腸捻転症の場合は内視鏡や注腸による治療で治ることもあります。
腸への血流障害を伴い、腸管が壊死(えし)におちいりやすい腸閉塞や腹膜炎による腸閉塞は、急速に状態が悪化するので緊急手術を行います。
緊急手術を要さない腸閉塞でも、内科的治療で治らない場合は手術を行います。この場合できるだけ合併症を起こさないように、輸液や抗生物質の投与、チューブによる腸の内容物の除去などで体の状態を整え、さらに検査で原因を明確にしてから手術を行います。
]]>盲腸(虫垂炎)の原因については、実は解明されていません。現段階では、異物(種や果物の皮など)や糞便、先天的な形態の異常、腫瘍や細菌・ウイルス感染症により虫垂の内腔(ないくう)が詰まり、さらに腸内に常在している菌が虫垂壁に侵入して感染が生じて起こるのではないかと考えられています。
また、先進国に多く、過労や暴食のあと発症しやすい傾向があることから生活環境にも原因があると言われています。
盲腸(虫垂炎)の主な症状は、食欲がない、発熱(37度台の微熱)、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛です。
腹痛は最も重要な症状です。初期段階では腹部全体、特にみずおちに痛みが発生し、数時間から24時間以内に右下腹部に痛みが移るのが典型的な症状です。
また虫垂の先端が背中側にくっついてしまい、そこで炎症がひどくなった場合は、歩行時に右下腹部の痛みが強くなったり、腰痛を伴うこともあります。
お腹の力を抜けないほどの疼痛や、右下腹部を押さえてから急に放すと疼痛が著しくなる時は炎症が虫垂壁全体からさらにその周囲まで及んでいる可能性が高く、手術する必要があります。
発熱は必ずしも炎症の程度を現したものではなく、たとえば虫垂のあるところに炎症が限局していれば、発熱という全身的な反応が起きない場合もあります。
逆に急に高熱になり、疼痛が右下腹部から腹部全体に広がって、その程度も強くなった場合、虫垂の壁が炎症によって腐り孔があき、膿がお腹の中に広がり、腹膜炎を起こしている可能性が高いと考えられます。しかし高齢者の場合は、たとえ虫垂の壁が腐って腹膜炎を起こしていても、発熱しないことがあるので注意してください。
吐き気・嘔吐は虫垂炎による周囲への刺激で起こり、このような症状があるときは、ある程度以上の強い炎症が起こっている可能性があります。炎症に伴い腸の運動が低下して便秘などの便通異常をきたすこともあります。
検査は、採血、腹部単純X線、CT検査や超音波などです。
採血では特にからだの炎症の程度をあらわす白血球や反応たんぱく(CRP)の値が問題となります。
炎症が起こると、早期に白血球が増加し、急性虫垂炎の場合、約90%で1万/μl以上の値を示すといわれます。この値が治療の方法を決定する1つの指針となります。
CT検査や超音波検査は、ある程度炎症が進行した虫垂炎の診断に有効な検査です。虫垂が大きく腫れていないか、壁が厚くなっているか、周囲に膿はたまっていないかを判断します。
右下腹部に痛みを伴う病気は、虫垂炎の他に急性腸炎や右尿管結石、結腸憩室(けいしつ)炎、子宮外妊娠破裂、卵巣嚢腫茎捻転(のうしゅけいねんてん)などがあり、症状や検査でこれらの病気と区別する必要があります。
内科的治療、いわゆる「盲腸をちらす」か、外科的治療をするかは、症状や診察、検査の結果などで判断されます。
特にお腹を触った所見が重要で上述のように、お腹の力を抜けないほど腹壁が緊張していたり、右下腹部を押さえてから急に放すと痛みが著しいい場合は、炎症が虫垂壁全体さらにはその周囲まで及んでいる可能性が高く、手術を行う必要があります。
しかし、このような症状がない、または軽い場合は、採血や超音波検査でもそれほどの異常がないと判断されれば、まず安静を保ち、食事制限、補液、抗生物質などの内科的治療で治ることもあります。また腹痛をみとめる右下腹部を皮膚の上から冷やす(鎮痛や細菌の増殖、炎症の波及を抑えるのが目的)ことも有効です。
]]>ポリープは、組織学的に以下のように区分されています。
大腸ポリープに特有の症状はなく、便通異常や腹痛のために大腸内視鏡検査を受けた時に、偶然に発見される場合がほとんどです。 ただし、小さいポリープでは無症状ですが、ポリープが大きくなると腹痛、血便、下血などの症状が現れます。肛門に近く、大きくなるほどその頻度が高くなります。 直腸では排便時に肛門から脱出することもあります。有茎性のものでは、腹痛や腸重積の原因になることもあります。
大腸ポリープの原因として、最近では遺伝子の異常が考えられ、先天的なものと後天的なものがあります。 先天的遺伝子異常は、血縁者に大腸ポリープや大腸がん等がみられる場合に遺伝子の異常をもっている可能性があります。
大腸ポリープの大きさや形により、ホットバイオプシー、スネアポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)のいずれかの内視鏡的治療がおこなわれます。いずれの場合も高周波電流によってポリープを焼き切ります。 また、焼き切ったポリープの病理組織学的診断によって、良性と診断された場合は治療は完了します。 また、もしがんが含まれていたとしても、粘膜内がんでは転移の危険がないためポリープ切除で治療が完了します。 これが、粘膜下層浸潤がんの場合は、手術が必要なことがあります。
]]>大腸がんは、特にS状結腸と直腸に多くみられ、日本では生活習慣の欧米化とともに増加し、大腸がんが胃がんを追い抜くと言われ、特に50~60代で発病することが多いですが、早期に治療をすれば治りやすいがんです。
ガンが小さいうちは症状がないことも多く、がん検診などの便検査で見つかったり、別の検査でたまたま見つかったりしますので、定期的に健診を受けるようにしましょう。
大腸癌のおもな症状は、出血と、下痢や便秘などの便の異常です。
大腸がんにも色々な種類と段階があり、早期癌のポリープがんから、腸を塞いでしまうような潰瘍型の進行がんまであります。
出血は初期の段階でも排便時に便にやや黒ずんだ色の血がまじっていたり、血の塊りが出たりします。また、血液と共に粘液が混じることもあります。
真っ赤な血の場合は、痔の可能性があります。
がんの進行に伴い、腸が狭くなっていき、ある程度狭くなると、腸の通りが悪くなり排便が思うようにいかなくなり、下痢と便秘をくり返すようになります。
ただし、これらの症状は、必ずしも毎日現れるというわけではなく、一時的に症状が現れなくなることがあるので注意が必要です。
結腸がんや直腸がんでは、便が細くなるという症状がみられます。癌が進行し相当大きくなってからでないと通りが悪くならないため気が付きにくいですが、気付いた時には、お腹の外からしこりを触れるくらいになっていることもあります。
さらにガンが進行すると、完全に腸を塞ぎ、お腹がはり便もガスも出なくなってしまい、激しい腹痛や吐き気もみられるようになります。
腸閉塞の状態で、緊急手術が必要になります。また、がんが大きくなって、周囲の神経・筋肉を侵し始めると、激しい痛みが起こります。
直腸がんが膀胱(ぼうこう)や子宮に広がると、排尿障害や血尿、尿失禁などを起こしたり、腟から便が出ることがあります。
大腸がんも全身に広がると痩せ衰え、やがて命を落としてしまうこともあります。
大腸ガンの原因は、現代医学でもまだ解明されていません。
動物性脂肪分が多い食生活を続けると、大腸がんになりやすいと言われています。欧米では、大腸がんの予防のために食物繊維を積極的に摂取しているそうです。
また、遺伝的な要因もあるとも言われていますので、ご家族や親戚の方で大腸がんに罹った方がいらっしゃる場合には、注意が必要かもしれません。
出血や便通異常などがある場合は、血液検査を行い貧血の有無、X線検査で便やガスが溜まっていないかなどを調べます。場合によっては、大腸内視鏡検査をおこないます。直腸がんは、肛門から直腸触診である程度診断できます。
最近では、手軽で安全な大腸内視鏡検査で大腸の内側を観察しながら、がんやポリープなどの腫瘍を探し、一部を摘まんで顕微鏡で調べて、悪性かどうかを診断します。大腸がん治療は、がんの切除です。がんを含めて腸の一部をまわりのリンパ節とともに切除し、残った腸どうしを吻合します。ごく小さいものや、長い茎をもつポリープ状のものは、内視鏡で切りとってしまいます。
早期のがんでも、大きいものや、平たく切り取りにくい場合は、進行したがんと同様に腸の一部を切除しますが、最近では小さい切り口で手術をおこなう腹腔鏡手術が急速に普及してきました。
この手術は、術後の回復も早く、傷も目立たなくなります。 大腸がんの手術後、腸が多少短くなってもほとんど影響はありませんが、直腸がんの手術後は、排便回数が多くなってしまうことがありますが、ほとんどの場合、時間の経過とともに落ち着きます。
直腸がんのうち、肛門に近い場合や、周囲に広がっている場合には、腸をつなぐことができないため、お腹に開けた孔から腸を外に引き出して人工肛門を作ります。
人工肛門というと不安に思われるかもしれませんが、技術進歩によって、色々な装具が開発されており、多くの人が普通に生活をされています。
また、大腸がんで腸閉塞になってしまった場合も、便やガスを外に逃がすため、一時的に腸をお腹の外にひき出して人工肛門を作る場合があります。状態がおちついた時点で、がんのある部分を切除します。
広がったがんを全て切除できないような場合や、いろいろなところに転移している場合には放射線治療や抗がん薬治療を行うことになります。 進行したがんによって周囲が侵され激しい痛みがある場合には、モルヒネなどの麻薬が効果的です。
]]>急性腹膜炎には、急性汎発(はんぱつ)性腹膜炎と急性限局性腹膜炎に分けられます。
腹膜の炎症である腹膜炎のほとんどは急性腹膜炎で、大部分は細菌感染によって起こり、短期間のうちに急速に悪化するのが特徴です。
急性腹膜炎の症状は一般的に腹痛、腹部膨満感、発熱、頻脈、頻呼吸、嘔吐などが起こります。症状が重くなると激しい腹痛があり、腹部全体が板のように硬くなります。
急性腹膜炎の原因は、虫垂炎、大腸憩室(けいしつ)炎、胆嚢(たんのう)炎、膵(すい)炎、肝膿瘍(のうよう)の破裂などがあり、また、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)の穿孔(せんこう)、胃がんや大腸がんの穿孔などによって、腸の内容物や細菌が腹腔内に流れ出ることにより急性腹膜炎を起こします。
限局性腹膜炎の場合には、補液、抗生剤の投与により保存的に治療することで治ることもありますが、早期の手術が基本です。
まず手術のできる病院に搬送することが重要で、その間は絶食・絶対安静です。手術では悪い部分を取り除き、腹腔内を洗浄後、膿を体外に導くビニールの管をからだに入れます。
術後も、呼吸、循環、栄養の状態が悪いので、安静、絶食、輸液、そしてしばしば人工呼吸器による管理が必要となります。
]]>急性肝炎とは、種々のウイルス感染が原因で発熱、倦怠感、食欲低下、胃部不快感、嘔吐、黄疸とともに急性の肝障害をいいます。
急性肝炎の原因となるウイルスの種類によって、以下のように分類されています。
A型肝炎ウイルスの感染経路は、主に飲食によるものがほとんどでウイルスに汚染された井戸水や貝類、特にカキの生食が原因となります。 井戸や河川などの水を飲料水としている地域では、水源がA型肝炎ウイルスに汚染され、肝炎の大流行が生じることがあります。経口的に体内に侵入したウイルスは肝臓にたどりつき増殖し、1カ月ほどの潜伏期間ののち発症しますが、この間にウイルスは胆汁を介して糞便中に排泄され、新たな感染源となります。
A型急性肝炎の症状は、発熱、関節痛などの"風邪"のような症状、食欲低下、吐き気、嘔吐(おうと)などの消化器症状、全身倦怠(けんたい)感などが現れ、1週間ほどで黄疸が出ます。
ほかのウイルス性肝炎とくらべ、発熱の頻度が高く、冬季に多発するという特徴があります。後者は、生ガキの摂取と関連していると考えられています。
感染から発病までの潜伏期間は約2~6週間で平均1カ月です。
特別な治療は必要なく初期の場合には、入院し安静に寝て治療します。肝臓への血液の流入がよくなり、肝臓の修復が促進されます。消化器症状が強く、食欲がない間は点滴によって糖分やビタミン類の補給をおこないますが、回復期には、肝臓の修復を促進するため高たんぱく食とします。
通常、1~2カ月で治癒し慢性化することはありませんが、時に6カ月以上にわたり遷延する場合うや悪化する場合もあります。
HA抗体を保有している人は、A型肝炎に免疫状態となっており、二度とA型急性肝炎になることはありません。我が国におけるHA抗体の保有率は高年齢層にかたより、20歳以下の若年齢層ではほとんど抗体を保有していません。
これは衛生環境の向上のため、A型肝炎の発生が減少していることによります。HA抗体をもたない人が、東南アジアなどA型肝炎の流行地へ滞在する場合は、生水や生ものに注意する必要があります。
]]>輸血に使用する血液の提供者は、検査を受けているので輸血によってB型急性肝炎に感染する事は、現在はほとんどありません。
B型急性肝炎の原因は、先に書きましたように感染者の血液や体液に接触することで感染します。
B型急性肝炎の症状は、感染から発病まで潜伏期間は1~3カ月と言われています。稀に6カ月に及ぶ場合もあります。肝炎の程度は人によって差があり、「少し調子が悪い」程度で終わってしまう場合や、A型肝炎同様に結構ひどい症状まで様々です。A型肝炎と比較すると発熱することは少なく、発熱したとしても高熱にはなりません。
通常は2~3カ月で治ります。しかし、免疫不全患者では遷延化・慢性化することがあります。(→B型慢性肝炎)また、約3%の症例は、劇症肝炎(→劇症肝炎)と呼ばれる、生存率30%程度の意識障害を伴う重篤な肝炎に発展することがあります。人工肝補助や薬物療法を行っても肝不全が改善しない場合は、肝移植が必要になります。
B型肝炎感染者の血液や体液に直接触れないことです。しかし、家族に感染者がいる場合や医療従事者など、感染者の血液、体液に触れる可能性がある場合には、B型肝炎ウイルスワクチンの接種を受けることで、HBs抗体を獲得し免疫状態となることが可能です。
しかし、ワクチンを接種しても全員が抗体を生成できるとは限りませんし、抗体が出来るまで6カ月もかかる場合があります。
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